'80年代以前は、VansやAirwalk、Visionといったブランドのスケシューだけでなく、Nikeやadidas、Pumaなど大手スポーツブランドのバッシュやテニスシューズがスケシューの代わりによく履かれていました。

しかし、'90年代のニュースクールと言われる時代に入ると、スケーターによるスモールカンパニーのスケシューブランドが次々と誕生します。'90年代後半にはスケシューブランド全盛期を迎え、逆にVansやAirwalkといった老舗ブランドは一時的に影を潜めることになりました。DC、éS、DVS、Lakaiなど人気ブランドがひしめき合い、新作が追いきれないほど次々とリリースされていた時代です。

その一方で、当時の大手スポーツブランドに対する空気感がよくわかる映像があります。1999年にリリースされたTransworld『Reason』です。
とある少年にトニー・ホークなどスケート業界について散々語らせたあと、最後にその少年が着ていたNikeのTシャツをスティーブ・ベラが小馬鹿にするシーンがあります。

今観ると「なぜ?」と思うかもしれませんが、当時は「通なスケーターならNikeのTシャツなんて着ない」という空気が確かに存在していました。実はNikeはその少し前、1996年に一度スケート市場への参入に失敗しています。
この頃は、ビッグマネーよりもスケーターが運営するスモールカンパニーへの忠誠心のほうが圧倒的に強かった時代だったと言えるでしょう。そのためNikeはSavier、adidasはLinkといったスケシューブランドへ出資し、スケート市場での成功の足掛かりを作ろうとしました。しかし、その試みもうまくはいかず、どちらのブランドも短命に終わっています。

転機となったのは、2002年に誕生したNike SBです。当時からNikeといえば、アメリカ資本主義の象徴とも言える存在で、大金を投じてスター選手を獲得する巨大企業というイメージがありました。しかし、発足当初のNike SBは、そのイメージとはまったく異なります。プロモーションは控えめで、チームもスター選手より通好みのスケーターを中心に構成。

さらに、éSやLakaiといったスモールカンパニーに敵対的な戦略を取っている感じもありませんでした。そのため反発も少なく、比較的スムーズにスケーターたちへ受け入れられていった印象があります。このあたりは、adidas SkateboardingがNike SBより少し前から通好みのチーム編成と控えめなプロモーションで一定の理解を得ていたことを参考にしたのかもしれません。

'00年代に入るとスケシューのトレンドも変化し、Vansが復権。éSやLakaiなども時代に合わせたデザインへシフトし、人気は依然として高いままでした。その横でNike SBやadidas Skateboardingも徐々に支持を広げ、ついには他ブランドと肩を並べる存在へと成長していきます。

そんな最中に起きた2008年のリーマンショックが、最大の転機となりました。世界的な不景気により、資金力の乏しいスモールカンパニーは大きな打撃を受けます。一方で資金力に勝る大手ブランドは比較的早く立て直し、その後はスモールカンパニーのチームが徐々に縮小。実力あるスケーターも次第に大手ブランドへ集まっていく流れが生まれました。

'10年代以降は、不動の地位を築いたVansに加え、Nike SBとadidas Skateboardingが市場をリードし、さらにNew Balance Numericや後発のASICSも存在感を増しています。リーマンショック以降も新型コロナや戦争など、ことあるごとにスモールカンパニーは影を潜めていき、せっかく魅力的なチームを作っても、買収などの騒動で簡単にリセットされてしまう状況が続いています。さらに買収後は、ブランドを作ってきたオリジナルメンバーが離れてしまうケースも多く、ブランドへの忠誠心まで失われてしまうというジレンマもあります。スモールカンパニーにとっては、ますます厳しい時代になっているように感じます。
個人的には、スケートボードから生まれたカンパニーが業界を引っ張ることで、間違った方向には進まない安心感があります。また、自分の考えと違う方向へ進んだとしても、「スケーターが決めたことなら仕方ない」と納得できる部分もありますし、やはり応援したい気持ちはありますが、現実はなかなか思うようにはいきません。
ちなみに前回のコラムでも触れましたが、ここで紹介しているスケシューのトレンドは、あくまでアメリカと日本を中心に見た話です。例えばInstagramで'90年代のスケシュー好きコミュニティを覗くと、南米のユーザーがとても多いことに気付きます。C1RCAも本国やEUよりも、チリ(www.instagram.com/circachile/)での人気の方が高くSNSのフォロワーも多い状況です。

また、最近DCが南米ツアーを行った際には、多くのファンが集まり大盛況だったそうです。


さらに南米には、'90年代のスケシューをサンプリングしたオリジナルブランドも数多く存在し、それぞれ一定の支持を集めています。


そして、アジアやアフリカなど、まだスケートカルチャーが発展途上の地域では、アメリカや日本とはまったく異なるスケシュー文化が育っていく可能性もあるでしょう。その辺りの動向も、今後は非常に楽しみです。
最後に、今回登場した'90年代を代表するスケシューについて、筆者の詳細解説動画があります。下記に掲載しておくので、ご覧いただければ幸いです。
FRICKS KICKS @fricks_kicks
苦節9年、YouTubeにオリジナル動画150本超で総再生約40万回と超低空飛行中。
コラム一覧:www.vhsmag.com/column/frickskicks/
















