オーストラリア発のスケートブランドPass~Portの最新フルレングス『You’re A Stranger Here But Once』。昨年の大怪我からの復帰、2週間に及ぶ泥臭いオーストラリアでのキャンプツアー、日本での集中的な撮影、そしてチーム正式加入まで。シドニーでの試写会を終えたばかりの竹井勇磨に話を聞いた。
──YUMA TAKEI / 竹井勇磨
[ JAPANESE / ENGLISH ]
Photos courtesy of Pass~Port
Special thanks_Harvest Dist.
VHSMAG(以下VM): まずはPass~Portの新作フルレングス『You’re A Stranger Here But Once』の撮影、お疲れさまでした。こないだまでシドニーに行ってたと思うけど、現地の試写会はどうだった?
竹井勇磨(以下YT): 試写会はめちゃくちゃ盛り上がりました。今回Pass~Portからデビューパートを出したケンケン(滑川絢斗)がすごくかましてて。最初は現地でも「こいつ誰だ?」みたいになってたんですけど、誰もメイクしてないスポットでかましたり、かなりいい映像を残してて。あいつは普段結構シャイなんですけど、堂々としてて安心しました。
VM: 今回のビデオは約2年かけて制作されたとのことだけど、自身の撮影はどんなスケジュールで進んだの?
YT: 最初は今年の3月にオーストラリアで2週間、キャンプしながらロードトリップするツアーに行ったんです。元々はそのツアー映像を作る予定だったんですけど、天気が悪くて思ったように映像が溜まらなくて。そしたらファウンダーのトレント(・エヴァンス)から「何人かはもうパートができてるから、ツアー映像と混ぜて1個のフルレングスにしよう。だから5月から日本で撮影してくれ」って連絡が来て。そこから本格的に撮影が始まりました。
VM: 公開までの期間を考えるとかなり短期間だったんじゃない?
YT: かなり短期間でしたね。今年の夏は本当に暑かったし、雨も多かったので時間との戦いでした。しかも昨年の頭くらいに足を怪我して半年くらい滑れなかったんです。それで今年3月のオーストラリアツアーが復帰後初の海外ツアーで。
VM: ビデオにも収録されていたけど、オーストラリアツアーで残したノーリフリップのバンクインは印象的だったね。
YT: あれは昨年、足を折ったときと同じトリックで。だからメイクして映像でみんなと抱き合ってぶっ倒れてるシーンがあるんですけど、あれは「あぁ、もう足が折れなくてよかった…」っていう安心感からきたリアクションだったんです(笑)。


VM: そんなドラマがあったんだね。ツアー自体はどうだった? キャンプしながらの移動って結構ハードそうだよね。
YT: ハードなツアーでしたね(笑)。シドニーからキャンベラあたりまで北上しながらキャンプしたんですけど、海で体を洗ったり、朝早く起きるとカラム(・ポール)が釣りをしてて、コーヒー淹れながら現地の虫や植物について教えてくれたり。車の中でいきなりガスコンロつけてベーコン焼き始めたりして「危ないな!」とか思いつつ…でもめちゃくちゃ楽しかったですね。
VM: 日本での撮影はどんな感じで進めたの?
YT: 5月以降は川崎を拠点に撮影したり、カメキョウくんと関東圏のスポットを回ったり。ケンケンとはそれまで一緒に滑る機会があまりなかったんですけど、今回初めて本格的にセッションして。すごく刺激になりましたね。
VM: ビデオ全体を通して、他のライダーのパートで印象に残っているシーンは?
YT: 全員本当によかったですね。オープニングのサム(・サットン)のパートも最高でしたし、ラストのテニー(アレックス・テニソン)もヤバかった。テニーは撮影期間中にカリフォルニアで車に乗ってたら銃で腕を撃たれたりして…映像にもその場面が出てくるんですけど、そんなアクシデントを乗り越えてあの凄まじいフロントサイドボードスライドを決めてるのは本当に喰らいました。あとはマチュー(・ルーカス=ディスーザ)がバンクを使ってノーフットでバーを飛び越えるオーリーとか、試写会でも「なんだこれ!」って大歓声が上がってましたね。
VM: 試写会の後のシドニー滞在もかなりお祭り騒ぎだったみたいだね。
YT: そうなんです。シドニーの街でブランドのフェスがあったり、WKNDの試写会やプロ昇格のサプライズもあったりして、ずっと盛り上がってて。最終日はケンケンが全身筋肉痛で「もう動けない…」ってなってたので、じゃあ海でも行こうかってPass~Portのストアでゆっくりしてたんです。そしたら外にマイク・オミーリーがいて。お店に入ってくるなり、ケンケンに向かって「オマエ、オレの街に来たんだからオレと撮影しないと日本に帰らせねえからな!」って(笑)。そのままケンケンを肩に担ぎ上げて外に連れ出したり。
VM: 最高のエピソードだね(笑)。
YT: その後はみんなでボンダイビーチに行って、ケンケンはサーフィンもしてオーストラリアを満喫してました。初の海外だったみたいですけど、最高のスタートになったんじゃないかなと思います。


VM: Pass~Portとの関わりについてもう少し深く聞きたいんだけど、初めてオーストラリアに行ったのっていつ頃?
YT: 10年前の2015年です。当時19歳でワーキングホリデーを使ってメルボルンに1年間行きました。17歳の高校生の時に夏休みで2週間バンクーバーに行ったのが初の海外で、高校を卒業して大学に行く気もなかったので「海外行こうかな」と思って。周りから「オーストラリアいいよ」って聞いてメルボルンを選びました。
VM: 当時は英語もあまり話せなかったと思うけど、現地での生活はどうだった?
YT: 全然喋れなかったですね。ワーホリで飛び込んだので。でもパークに行けばスケーターはみんな話しかけてくれるのですぐ友達ができたし、当時はChatty Chattyの石川雄也くんとか日本人のスケーターも結構いて助かりました。到着早々、家賃詐欺に遭って14万円くらい騙し取られるハプニングもありましたけど。「住めるよ」と言われてお金を払ったら詐欺だったという(笑)。でもオーストラリアは給料が週払いだったので、なんとか生きていけました。メルボルンは街全体がコンパクトで、1年中スケートがしやすい最高の環境でした。
VM: そこでPass~Portというブランドに魅了されたんだ。
YT: ローカルがみんなPass~Portに乗ってて、地元愛がすごく強くて「めちゃくちゃかっこいいな」って。価格も現地では少し安く設定されてて、スケーターに優しいブランドなんです。その滞在中にカラム・ポールやファウンダーのトレントにもチラッと会ったりして。
VM: そこから正式にPass~Portのチームに加入するまでの経緯は?
YT: 帰国後、友達の(菅野)聖来がPass~Portの日本代理店のカッシーくんをつないでくれて、最初デッキを送ってもらえるようになったんです。その後、Pass~Portが東京ツアーで来日したときの『Kitsch』の試写会でクルーと再会して、一緒に滑って仲良くなって。
VM: 正式にライダーとして迎えられたと感じたタイミングはいつ頃だったの?
YT: それまではツアーやコラボ映像には呼ばれるけど「オレってどういう立ち位置なんだろう?」って少し不安だったんです(笑)。でも、EvisenとPass~Portのコラボツアーのときにトレントに確認したら「何言ってるの、お前はもうファミリーだよ」みたいに言ってくれました。うれしかったですね。
VM: 話は変わるけど、独特のスポットセレクションとウォールやバンクを攻めるスタイルが特徴的だけど、自身のルーツはどこにあるの?
YT: 新横のスケートパークで育ったんですけど、地元の上映会やパークで影山広輔くんのスケートを見て衝撃を受けて。とにかくプッシュが速いスケーターが好きです。あとはデニス・ブセニッツ、オマー・サラザーやジョン・カーディエルなんかもめちゃくちゃ見ましたね。
VM: スポットやトリックで意識していることは?
YT: 流れのなかで自分が一番気持ちよく滑れるラインを意識しています。ステアを飛んだり大きいレールに入ったりするのは昔から苦手で得意じゃないので、ずっと壁やバンク、レッジが好きですね。
VM: スケーターとして「これだけは譲れない」というこだわりはある?
YT: スピード感とプッシュですね。アプローチの助走や間のプッシュも含めて。


VM: 今年で30歳を迎えたと思うけど、20代の10年間を振り返ってみてどう?
YT: あっという間でした。コロナ禍で動けない時期もありましたけど、スケートしたいという気持ちは10年前からまったく変わっていません。20代で一番やりきったと思えるのは、やっぱりEvisenとPass~Portのコラボプロジェクトや、今回のPass~Portのフルレングスです。
VM: 30代に突入して、これからの展望ややっていきたいことは?
YT: 今後も変わらず仕事をしながらスケートを続けて、Pass~Portの新しいパートに向けてまた撮影を始めようと思っています。生活スタイルやスケートに対する姿勢は変わらないですね。あとは、今回一緒にオーストラリアに行って最高のスタートを切ったケンケンの今後がめちゃくちゃ楽しみです。あいつがこれからどう成長していくのか期待しています。

Yuma Takei
@kawasakiboy
1996年生まれ、神奈川県出身。ニックネームは川崎ボーイ。Pass~Port、Vans、Carhartt WIPなどのサポートを受け、Pass~Portの最新フルレングス『You’re A Stranger Here But Once』にも出演。

















