30年前の1996年。スケート史を振り返ると一見静かな年ですが、実はその後の30年を方向づける転換点だったと言えるかもしれません。大きな革命が起きたというよりも、ストリートスケートが輪郭を持ち、現在につながる言語が確立されていった時期。
試行錯誤を繰り返した'90年代前半の実験的な空気を経て、この頃にはストリートスケートの在り方がひとつのスタンダードとして定着。トリック単体の難易度だけではなく、スピード、フロウ、そして何よりスタイルが評価の中心に入り込んでいく。「WHAT」だけでなく「HOW」が重要になった時代。
この変化を決定づけた大きな要因として、スケートビデオの存在があります。VHSというフォーマットがカルチャーの中心にあり、スケートビデオは単なるプロモーションではなくシーンそのものを形づくるメディアとして機能していました。スケーターは誌面やコンテストの結果だけで評価されるのではなく、映像として繰り返し再生され、その記憶に刻まれていきます。
ビデオパートはただの情報ではなく体験として享受され、スケートショップや仲間同士のコピーを通じて広がっていきました。そのアナログな形には独特の時間感覚があり、映像は一瞬で消費されるものではなく、何度も巻き戻され、擦り切れるまで見続けられるものだったのです。
だからこそ30年前の作品が今も名作として語り継がれています。そもそも作品数自体が現在ほど多くなかったこともあり、当時のスケートビデオには「通り過ぎる」というより「滞在する」感覚がありました。インターネットによるリアルタイムな展開も、SNS的な断片消費もまだ存在しない時代。だからこそスケートビデオは長く、濃く、ある種の重みを持ち、1本のパートがその時代の空気そのものを背負っていました。
今回1996年を取り上げたのは、30年という区切りの良さから。この時代を美化したいわけではありませんが、やはり良いものは良い。この年にリリースされたフルレングスを改めて見返してみると、その後のスケートシーンの加速を可能にした土台がすでに形づくられていたことがわかるはずです。
—MK

















