ATIBA × VANS - UNITED THROUGH SKATEBOARDING COLLECTION 2.0

2000年代初頭、スーツケースとスケートボードだけを手に上海へと渡ったトロント出身のジョニー・タン。まだ誰にも滑られていない大理石のレッジが点在する街で、中国のスケートシーンの礎を築いてきた人物のひとり。その後、Nike SB、Primitive、Red Bullをはじめとする海外チームのスポットガイドを務め、中国と世界のスケートカルチャーをつなぐ架け橋として活躍。現在はadidas Skateboarding Chinaのチームマネージャー兼クリエイティブディレクターとしてストリートカルチャーの発展に尽力しながら、ADI-MISSIONなどのプロジェクトを通じてローカルクルーを支援し、中国のスケートシーンを世界へと発信し続けている。
──JOHNNY TANG / ジョニー・タン

2026.10.13

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Special thanks_adidas Skateboarding

VHSMAG(以下VM): まずは生い立ちと、カナダから上海に移住した経緯を教えて。

ジョニー・タン(以下JT): トロント生まれで、スケートを始めたのは12歳のとき。スケートのおかげで最高の仲間たちに出会えたし、人生に対する考え方も大きく変わった。17歳のときに中国出身の母親の故郷を訪ねるために家族で旅行することになったんだけど、出発前に母親から「スケボーは持っていかないほうがいい」って言われたんだ。中国には舗装されていない道しかないと思っていたみたいで。オレも買ったばかりのセットアップを汚したくなかったから、結局持っていかなかった。でも香港に着いて中国本土に入ったらびっくりしたよ。どこを見ても花崗岩や大理石のレッジ、ステア、バンク、レールだらけ。街全体が巨大なスケートパークみたいだったんだ。それでカナダに帰った後、20歳のときにまた中国に行くチャンスがあって。当時サポートしてくれていたスポンサーのために映像を撮る2ヵ月間の撮影旅行の予定だった。それまでスケートショップで働いていたし、スポンサーもついていたから、スケートのことはそれなりにわかっているつもりだった。結局、2ヵ月のつもりが6ヵ月になって、気づけば20年も経っていた感じだね(笑)。

VM: 当時の中国のスケートシーンはどんな感じだった?

JT: カナダにあったようなシーンも環境も、何ひとつ整っていなかった。すべてがこれからって感じだったね。オレ自身も金なんてなくて、持っていたのはスーツケースとスケートボードだけ。何より驚いたのは、どこで滑ってもキックアウトされないこと。それに、どのレッジもまだ誰にも触られていない状態の大理石や花崗岩で、角もバッチリ立っていた。カナダの仲間にはFacebookで「こっちに来れば1日でフルパートが撮れるぞ」ってよく言っていたよ。でも、みんな相変わらずバルセロナに行っていたんだ(笑)。Instagramが登場してからは、何人かのスケーターと一緒にスポットの写真を投稿するようになった。ハッシュタグがブックマーク代わりになることに気づいて、場所を忘れないように都市ごとのタグをつけていたんだ。オレは英語も中国語も話せるから、そのうち海外のスケーターやチームマネージャーから「スポットを案内してくれないか?」ってDMが届くようになったんだよ。

「毎日プロたちの滑りを間近で見て、プロになるには何が必要なのかを知りたかった」

VM: 当時はどんなチームを案内していたの? 彼らから学んだことは?

JT: Primitive、Nike SB、411、Red Bull、adidasとかいろんなチームを案内したよ。オレとしては、ただ彼らと一緒に過ごして滑りを間近で見たかったんだ。プロになるには何が必要なのか、それを知りたかった。特に印象に残っているのは、2005年頃のNike SBの『Nothing But The Truth』の撮影ツアー。ステファン・ジャノスキーやブライアン・アンダーソン、オマー・サラザーとか、オレにとってはヒーローみたいな連中が来たんだ。いいホテルに泊まってルームサービスまで頼んでいるのに、オレは仲間の家のソファで寝ていた感じだった(笑)。それでスタッフに「なんでそんなに金を使うんだ?」って聞いたんだ。そしたら、ライダーたちは身体を張って滑っているし、ひとつのトリックを50回もトライして、何度も激しくスラムしたりしているんだって説明してくれた。だからこそ、ライダーが気持ちよく滑れる環境を整えて、ちゃんとケアすることが大事なんだって。そうすればいい結果も出るし、次のプロジェクトでさらに大きな予算を獲得することにもつながる。そういうブランド側の考え方を学べたのは大きかったね。今でもツアーを組んだり、ライダーをケアしたりするときの基本になっているよ。

VM: 海外のプロチームが中国に来ることで、ローカルシーンにはどんな影響があった?

JT: デモやサイン会の影響は本当に大きいと思う。オレもガキの頃、全盛期のクリス・コールを間近で見たことがあって、そのときのことは今でも覚えている。あの体験があったからこそ、ずっとスケートを続けたいって思えたんだ。海外のプロが中国に来れば、ローカルキッズたちも同じような刺激を受けられる。それに、中国のスケーターが世界のスケートコミュニティと直接つながるきっかけにもなるからね。

「7年間スケートをしてメダルを3つ獲ったとしても、若い選手に追い抜かれたらどうする? ストリートカルチャーも、映像制作も、アートも音楽も知らなかったら? 本当のスケートボードは、もっと世界を広げてくれるものなんだ」

VM: 今の中国のスケートシーンについてはどう思う?

JT: 今の中国のシーンは、完全に二極化していると思う。ひとつは、政府や大企業が莫大な資金を投入しているコンテスト中心のスケート。もうひとつは、昔ながらのリアルなストリートスケートカルチャーだね。コンテストの世界では、技術の進化がとにかくすごい。スケートを始めてたった4年のキッズが、11段のハンドレールでスイッチバックサイド50-50をメイクするんだから。でも、オレが聞きたいのは「それを覚えるまでの過程は楽しかったのか?」ってこと。それに、優勝できなくなったらどうするんだろうって。コンテストスケーターは、まるで機械みたいにトレーニングされている。でも、ビデオパートの撮り方も知らない、ストリートで一緒に滑る仲間もいない、アートや音楽にも触れていないし、コミュニティとのつながりもない。そんな状態だったら、コンテストに出られなくなったときに何が残るんだろう? 昔のコンテストのランを何度も見返す人なんて、ほとんどいないでしょ。でも、センスがあって作品としてもイケてるストリートのビデオパートなら、ずっとオンラインに残るし、何年経っても誰かに刺激を与え続けるんだ。

VM: そういう思いが、今のadidas Skateboarding Chinaでの活動につながっているの?

JT: 以前は別の大手ブランドで長年働いていたんだけど、一時期カナダに戻って、実は釣りにどっぷりハマっていたんだ。釣りのスポンサーまでついたくらい(笑)。でも、あるとき中国版TikTokを見ていたら、スケートボードがめちゃくちゃダサい見せ方をされていたんだよ。転んだり、泣いたり、くだらないことをやって「いいね」を稼ごうとしている。しかもブランドまでそういうのを後押ししていたんだ。それを見て、もう一度シーンに戻ってローカルのスケーターたちにちゃんとしたチャンスを作らなきゃって思ったんだ。今はadidas Chinaでチームマネージャーとクリエイティブディレクションを担当している。adidasとの仕事は最高だよ。オレの考えを信頼して、自由にやらせてくれるからね。インフルエンサーを起用したり、商品撮影に無駄な予算を使ったりはしない。その代わりにチームでストリートの撮影ツアーに出かけて、リアルなスケートビデオを作り、本物のストリートスケーターたちにスポットライトを当てているんだ。ちなみに、adidasでオレの上司にあたるパンは、以前別のブランドで一緒に働いていたときはオレの部下だったんだ。だから付き合いも長いし、お互いをよく理解していて、リスペクトし合える関係なんだよ。

VM: adidasのライダーのジェイデン・ザンについても聞かせて。彼はチームにとってどんな存在なの?

JT: ジェイデンと初めて会ったのは、彼が9歳のときだった。ボードコントロールも足さばきもハンパじゃないし、あの年齢とは思えないほどスタイルが完成されている。でもオレが彼をサポートしているのは、単にスケートが上手いからじゃないんだ。ストリートスケートがどれだけアーティスティックで、かっこよくて、価値のあるものなのか。それを親たちや世間に伝えるうえで、彼はすごく重要な存在なんだよ。コンテスト特有の政治的な駆け引きは、彼にはあまり合っていないと思う。だからオレたちはストリートでの撮影に集中して、彼が持っている才能をそのまま発揮できるようにしているんだ。

 

VM: 今年上海で行われるADI-MISSIONについて教えて。どんなコンセプトのイベントなの?

JT: ADI-MISSIONは、adidasのThree Stripe Skate Hypeというプラットフォームのもとで毎年開催している宝探しみたいなイベントなんだ。今年で3年目になる。初年度は上海で開催して、中国の小さなインディーズのスケートブランドを招待した。そして参加者にミッションブックを渡したんだ。そこには、街を探索したり、映像編集でクリエイティビティを発揮したり、指定されたトリックに挑戦したりと、いろんなミッションが書かれていた。普段はやらないようなことに挑戦して、新しいトリックを覚えたり、仲間と一緒にちゃんとした映像作品を作ったりしてほしいんだ。SNSで手っ取り早く「いいね」を稼ぐんじゃなくてね。2年目は成都で開催して、タイや韓国など、アジア各地のクルーにも参加してもらった。そして今年はヨーロッパのプロスケーターやメディアも招待している。最終的には、中国とアメリカのメディア、そして世界中のスケートコミュニティをつなげていきたい。中国のスケートボードは、金メダルだけじゃない。それを世界に知ってもらいたいんだ。

 

VM: 今年のイベントに向けて、上海に常設のスケートパークも作ったそうだね。

JT: そうなんだよ。上海の中心部にある有名なエリアに、かなり大きな常設スケートパークを作る許可が下りたんだ。ほかのブランドも何年も前から挑戦していたけど、実現できなかったことなんだよ。完成したパークを初めて見たときは、本当に涙が出たね。ローカルのみんなにとっても、ずっと夢見ていたことが現実になったんだ。

VM: 最後に、ADI-MISSIONや自身の活動を通じて、スケーターたちに何を感じてほしい?

JT: ただ純粋に楽しんで、心から感動できる体験をして、国境を越えた友情を育んでほしい。世界中のスケーターがつながり、飾らないリアルな感情を共有すること。それはどんなコンテストの得点やメダルよりも、はるかに価値のあることだと思うから。
 

Johnny Tang
@johnny_tang

トロント出身のスケーターであり、中国のスケートシーンを支えてきた重要人物。数々の海外トッププロチームのスポットガイドを務め、現在はadidas Skateboarding Chinaのチームマネージャー兼クリエイティブディレクターとして活動。ADI-MISSIONなどのプロジェクトを通じて、アジアのリアルなストリートカルチャーの発展に尽力している。

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