
1979年に撮影された1枚の写真が時を越えてスケートコミュニティに衝撃を与えました。写っていたのは雨の中で傘を差し、リラックスした表情でダウンヒルをする10代の黒人少女。この写真はBlack ArchivesというサイトがIGに投稿したもので、「1973〜1987年頃、ノースカロライナ州フェイエットビル近辺で撮影されたスタッフ写真」とだけ説明が添えられていました。
やがてこの写真がクライド・シングルトンの目に留まり、『Closer』誌でコラムを書いたことをきっかけにその背景に注目が集まります。さらにトニー・ホークまでもが謎の少女探しに参加。SNSでは「#WhoIsShe(彼女は誰?)」のハッシュタグが広まり、フェイエットビルの街角で撮られた1枚の写真が世界中のスケーターの関心を集めることとなりました。
そしてついに、ずっと正体不明だったこの少女が特定されます。名前はショーンダ・シェーン。現在は50代半ばで静かな生活を送っており、この写真が話題になっていたことすら知らなかったとのこと。でもこの発見はスケート史にとっても大きな意味を持っていました。
というのも、アメリカにおけるスケートカルチャーはずっと白人男性中心のものとして語られてきた側面があります。そんななか、この1979年の写真は黒人の少女が当時すでにスケートを楽しんでいたという歴史的事実を証明する存在となったのです。ショーンダは気づかぬうちにスケートカルチャーにおける「知られざる歴史」の象徴となっていたのでした。
今年5月にはこの物語がPBSノースカロライナで特集され、ショーンダとクライドのインタビューが放送されました。さらに、この伝説の写真を使用した限定デッキが発売されるというニュースも届いています。
というわけで、いまやスケート史を語るうえで欠かせない1枚の写真と、それにまつわる特集番組をチェックしてみてください。50年近く前のランダムな写真が現代のスケートコミュニティに影響を与えるなんて。めちゃドラマチックです。
—MK