ADIDAS SKATEBOARDING

『You Got It My Boy Jamie...』はジェイミー・プラットを軸に制作されたPolar Skate Co.の最新作。長年タッグを組んできたフィルマーのサイラス・ガーンとの信頼関係から生まれた本作は、スケートだけでなく、ふたりが積み重ねてきた時間や友情までも映し出している。タイトルの由来から映像演出の裏側、印象的なシーンの背景まで。ジェイミーとサイラスが本作に込めた思いを語ってくれた。
──SIRUS GAHAN & JAMIE PLATT

2026.07.04

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Special thanks_Kukunochi

 

VHSMAG (V): まず最初に『You Got It My Boy Jamie...』というタイトルの意味を教えて。

Sirus Gahan(S): 大した話じゃないんだけどね。タイトルは前の作品に出てきたセリフから取ったんだ。前作じゃなくて、そのひとつ前の『Sounds Like You Guys Are Crushing It』。LAでジェイミーがオーリーをトライしているときに、子どもが「You got it, my boy Jamie(ジェイミー、イケるって)」って声をかけるシーンがあるんだよ。今回のプロジェクトはジェイミーがいたからこそ実現した作品なんだ。実際に観てもらえればわかるけど、映像全体が彼のフッテージを軸に構成されている。あと、そのセリフをタイトルにしたことで、自分たちがこれまでやってきた流れも自然につながる気がしたんだ。ここ数本の作品は、印象に残ったセリフをそのままタイトルにしてきたから。

V: ということは『Sounds Like You Guys Are Crushing It』の撮影が終わったあとにジェイミーはこのプロジェクトの撮影を始めたってこと?

Jamie Platt(J): いや、正確にはそうじゃないね。オレのフッテージの7割くらいは、もともとConverseのビデオ用に撮っていたものなんだ。でもそのあとConverseを辞めてVansに移ったから、その映像をPolarで使うことになった。それがこの作品の土台になっている。そのベースができてから、そこに少しずつ肉付けしていった感じかな。ネイサン(・クランシー)もパートの撮影を始めて、ほかのみんなも徐々に自分たちのパートを撮り始めた。もとはオレのソロパートとして出す予定だったんだけど、ポンタスが速攻でそのアイデアに興味をなくしたんだ。ビデオパートよりも一本の映像作品を作るほうが好きだからね。そんな流れで、プロジェクトは自然ともっと大きな作品へと発展していった感じ。

V: 特に「ここは絶対にメイクしたい」と執着したスポットはあった?

J: あったね。フェンスをオーリーで越えてバンクインするクリップがあるんだけど、トリックそのものというより、あれをメイクするまでの過程に執着していたかな。スポットはロンドンから1時間以上離れた場所にあるから、行くだけでもひと苦労なんだよ。それに着地も厄介で、バンクの先がそのままステアにつながっている。だからステアの上にちょうどいい大きさの板を敷いておかないと、ロールアウェイできずにそのままステアに突っ込んでしまう。しかも、その板は毎回自分たちで探さなきゃいけない。ロンドンで使えそうな板を都合よく見つけるなんて、そう簡単じゃないからね。最終的にメイクできた日は、DIYショップに行ってちょうどいい板を見つけて、それを体感で5マイルくらい担いでスポットまで運んだんだ。

S: しかも、それを担いでとんでもない坂を登るんだよ(笑)。

J: そう(笑)。スポットに着く頃には、デッキとでっかい板を抱えて汗だく。執着って呼べるかどうかはわからないけど、たったひとつのトリックをメイクするためにそこまでやるんだから、やっぱりそのスポットに夢中じゃないとできないよね。

V: サイラスと一緒に撮影していてどうだった? 自分の得意な領域を超えるようなトリックにトライするよう促されたことはあった?

J: 自分の得意じゃないトリックを無理にやらせるようなことはないかな。どちらかというと、どんなトリックでも良く見せる撮り方を知っているんだ。たとえ「これはそこまででもないかも」と思うようなアイデアでも、サイラスが撮ると特別なものに見えてくる。それが一緒に撮影するうえで本当にすごいと思うところだね。それにオレらはもう10年以上の付き合いなんだ。子どもの頃から一緒に撮影してきたから、この作品を作れたことには感慨深いものがあった。駐車場やその辺のスポットでトリックを撮っていた頃から始まって、こうしてフルレングス作品を一緒に作るところまで来たわけだからね。もちろん、これだけ大きなプロジェクトにはプレッシャーもある。でもその一方で、相手のことをよく知っているからこその安心感もあったよ。

 

Photo_Bryce Golder

V: 作品のなかでも特に印象に残ったのが、ギャップ越えのノーリー360シャヴからの50-50。ノーリー360シャヴはなかなか珍しいよね。

J: 面白いタイミングでその質問をしたね(笑)。実は、あのトリックこそサイラスに背中を押された数少ない例なんだ。『Sounds Like You Guys Are Crushing It』で初めてのPolarのパートを撮っていた頃、ベンチをオーリーで越えて、ノーリー360ショービットをして、最後にウォーリーからグラインドにつなげるラインを撮っていたんだ。そのラインの真ん中に何を入れようか話していたとき、サイラスが突然「ノーリー360シャヴをやればいい。絶対ヤバいから」って言ったんだよ。それで試してみたら、みんなすごく気に入ってくれたみたいで。それ以来、そのトリックをやり続けて少しずつレベルアップさせてきた。でも、さすがにやりすぎたかもしれない(笑)。たぶん、もう二度とやらないと思う。…まあ、あと1回くらいならやるかもね。20段くらいで(笑)。

V: これはサイラスへの質問。スケートだけじゃなく、この作品を通してジェイミーのどんな一面を映し出したいと思っていた?

S: 一番伝えたかったのは、ジェイミーがどれだけ幅広いスタイルで滑れるスケーターなのかということかな。マジでほとんどどんなスポットでも攻められるから。でもケガが続いたことやプロジェクトの完成までに時間がかかることもあって、ヤツの本当の実力が十分に伝わっていなかったと思う。実際にジェイミーの滑りを目の前で見ると、圧倒的なパワーが即座に伝わってくる。でも、その迫力は映像だけではなかなか伝わりきらないんだ。だから今回の一番の目標は、自分が見ているジェイミーの姿をようやくみんなにも見てもらうことだった。
 あと、この作品に登場する少年と老人のビジュアルには、ある思いが重なっているんだ。ジェイミーとはヤツが十代の頃からの付き合いで、今でもどこかでは「あの頃の少年」のまま見ている自分がいる。だから赤いシャツを着た少年はジェイミーの象徴。あいつは本当によくどこかへ行っちゃうんだよ(笑)。半分くらいは、今どこにいるのかもわからない。ただふらっといなくなって、いつも動き回っている。そのイメージが少年が走り続けるシーンにつながっている。それからエンドロールで出てくる、少年がただぐるぐる歩き続けるカットがある。あのシーンはオレにとってジェイミーの思考そのものを表している。ジェイミーはいつもスケートのことばかり考えているんだ。どうすればトリックをもっと良くできるか、もっと大きなスポットでできるか、もっと先へ行けるか。頭の中ではその考えがずっとぐるぐる巡り続けている。外から見ているオレとしては、「もう十分、みんなが夢中になる滑りをしているから大丈夫」って伝えたくなるくらい。少年が同じ場所をぐるぐる歩き続けるあのカットは、そんなジェイミーの心の状態を映像として表現したものなんだ。

 


Photos_Bryce Golder

V: じゃあビーチにいるスーツ姿の老人にはどんな意味を込めたの?

S: ジェイミーとは昔から、スケートのことやお互いのキャリア、それに「いつかこの生活を終えたら、どんな人生を送るんだろう」っていう話をよくしてきたんだ。ジェイミーはイングランド南部にある海辺の小さな町、ボーンマスで育った。オレも大学時代をそこで過ごしていて、そこで初めて出会ったんだ。それ以来、「いつか全部やめて、スケート業界から離れて、あの静かな海辺の町に戻ろう」って冗談みたいによく話していた。だからビーチにいるスーツ姿の老人は、いわば未来のジェイミーなんだよ。引退して、生まれ育った海のそばへ戻ってきた姿……そんな未来をイメージしているんだ。

J: …それでも、頭の中ではまだポールジャムのことばかり考えているという(笑)。

S: そういうこと(笑)。引退しても、結局はポールジャムの夢ばかり見てるんだよ。

V: ジェイミーと少年が重なって見える演出がすごく印象的だった。さっき話に出たフェンス越えのオーリーでも、ふたりとも赤いシャツに黒いネクタイという同じ格好をしていたよね。

J:  あれはオレら自身の人生に何か特別な由来があるわけじゃないんだ。どちらかというと、オレらが子どもの頃から夢中になってきたカルチャーへのオマージュだね。エモやニューメタル、それからCKY全盛期のあの空気感とか。ああいうスタイルは昔からずっとかっこいいと思っていたし、ふたりとも自然と惹かれてきたんだ。

S: 実はあの格好で滑るアイデアを最初に思いついたのはジェイミーなんだ。前からいつかやってみたいと思っていて、あのバンクインのスポットを見つけたとき、「ここでやるのがちょうどいい」と感じた。結果的に、あれは撮影したエンダーのひとつにもなったしね。ジェイミーがあの服で滑ることが決まったから、少年にも同じ格好をさせるのが自然だった。そうすることで、ふたりを視覚的につなぐ演出が生まれたんだ。

V: 完成版の編集をめぐって、ふたりの意見がぶつかることは?

J: いや、特にはなかったね。完成した作品には本当に満足しているよ。強いて言うなら、入れてほしかったトリックがいくつか最終的にカットされたことくらいかな。そのクリップには、メイクするまでに費やした時間や苦労を全部覚えているから、自分にとっては特別な思い入れがあった。でもサイラスやポンタスは、あくまで映像そのものとして判断している。撮影までの過程を共有しているわけじゃないから、当然、オレと同じ感情では見ていないんだ。今振り返れば、「あのクリップは作品には合わなかった」と納得しているよ。結局のところ、オレは映像作家じゃない。そこは彼らの判断を信頼しているし、不満はまったくないね。

V: サイラスに聞きたいんだけど、この作品を作るうえでスケート以外から影響を受けたものはあった?

S: 直接的な影響はほとんどないかな。どちらかというと無意識のうちに受けていたものばかりだと思う。ただ、ひとつだけはっきり思い当たるものがある。スーパー8で撮った、ネイサンが街をプッシュしているシーン。あれはバスの2階席から撮影したカットなんだけど、そのアイデアの元になった映像があったんだ。音楽を聴きながら街中を全力で走る男性を撮った映像で、CMでも映画でもなく、ただ不思議なくらい美しいランダムな映像だった。あの視点がずっと頭に残っていて、「これをネイサンが全力でプッシュしている映像にしたら面白いんじゃないか」って思ったんだ。結果的に、あのカットは自分でも一番気に入っているシーンのひとつになった。そもそもオレはあまりスケートビデオを観ないから、インスピレーションのほとんどはスケートの外から得ているんだ。

V: とはいえPolarの作品には昔の名作へのオマージュがよく盛り込まれているよね。今回もいくつか気づいたけど。

S: そうだね、いくつかあるね。昔のPlan Bのビデオとか、『Video Days』とか、The Cureの曲、それからG&Sのオープニングトラックまで…そういうのは全部ポンタスのアイデアなんだ。ヤツの頭の中はずっと'90年代後半〜2000年代前半のスケートカルチャーにある感じで。よく音楽をかけてきて「これ覚えてる?」って聞いてくるんだけど、オレは「いや、それ出たときまだ生まれてないよ」って(笑)。ポンタスはあの時代が本当に好きなんだ。マイク・キャロルとか、あの頃のビデオにずっとテンションが上がっている。

V: 長い付き合いの中で、この作品を通してお互いに「こんな一面あったんだ」って思うことはあった?

J: あったね。サイラスはスケート以外の仕事をかなりしていて、CMやミュージックビデオ、ドキュメンタリーとかを監督してる。そういう現場は基本的にテンポが速い。数テイクで撮って次に進む、みたいな。でもスケートはその真逆で、何時間も、時には何日もかかることもある。その中で、ここ数年のサイラスはその速いペースに少し慣れてきた感じがあって、ひとつ気づいたのはトリックに時間がかかりすぎると嫌がるということ。でもそれはお互いにとって良いことで、オレはもっと早くメイクしようって気持ちになるし、サイラスも長いプロセスに対して以前ほどストレスを感じなくなってきていると思う。

S: 一番感じたのは、ジェイミーがどれだけスケートに真剣かってことだね。オレ自身はもう、昔みたいにつねにスケートのことばかり考えているわけじゃないし、トリックのことや次の作品をどうするかずっと考え続けているわけでもない。でもジェイミーは違う。ずっと新しいトリックやスポット、可能性のことを考えている。どこを見ても「ここはどうやったらスケートできるか」って自然に考えているんだ。そうやって、ひとつひとつのクリップに対してどれだけの思考と努力を注いでいるかを見て、ヤツのコミットメントを改めて強く感じた。最終的には、その積み重ねた努力がしっかり形になったのがこのプロジェクトだと思う。

 

Photo_Bryce Golder

V: よくある質問だけど、このビデオを見終えたあと、観た人にどんな印象や感覚を持ってもらいたい?

J: 正直なところ、ただ観た人がスケートしたくなるような作品になっていたらいいと思っている。今はスケートビデオを観てもあまり何も感じずに、そのまま次のコンテンツに流れていくような時代になってきている気がしていて。コンテンツが多すぎるからこそ、そうなりやすいというかね。もちろんこのビデオが何かを大きく変えるとは思っていないけど、それでも観たあとに「ちょっとスケート行こうかな」って気持ちになってくれたらうれしい。それが一番いいよね。

S: それが一番の目的だね。スケートビデオにとって最高の褒め言葉は、「観たらスケートしたくなった」って言われることだと思うし、それが本来の役割だと思う。でもそれに加えて、このビデオをちゃんと腰を据えて観てもらえたらいいなとも思っていて、その中で昔の自分、初めてスケートビデオを観たときの気持ちを少しでも思い出してもらえたらうれしい。「あのとき夢中になって、デッキを持って外に出て、フラットでもいいからとにかく滑ってた」っていう感覚だね。オレ自身も子どもの頃、『DC Video』とか『Mind Field』とかを観たあと、まさにそうやって外に飛び出していたから。そういう気持ちを少しでも呼び起こせたら最高だよ。

V: 改めて振り返って、このビデオで一番好きな瞬間は? 観るたびに思わず笑顔になるようなシーンは?

J: オレの場合は正直、ネイサンのフッテージ全部だね。特に上からの視点でヤツがプッシュしているショットが好き。あれを観ると、さっきサイラスが言っていた感覚がそのまま伝わってくるんだ。若くて、ただテンションが高くて、とにかく外に出て全力でプッシュして、好きなように滑りたいっていうあの感じ。ネイサンは本当にピュアなキャラクターで、スケートに対して純粋にワクワクしているのが伝わってくる。そういうところがフッテージにもすごく出ていると思う。あのクリップを観るたびに、なんていうか……ただ単純に、すごく笑顔になるんだ。

S: オレも同じだね。このビデオは本当にいろんなフィルマーが撮ったフッテージで成り立っている。ジェイミーのパートは何年にもわたって撮影されていて、いろんな人が関わっているけど、ネイサンのパートは基本的にふたりだけで6〜9ヵ月くらいかけて作り上げたものなんだ。ひとつやふたつ他の人が撮ったクリップもあるけど、それ以外はほとんど全部、ふたりだけで撮っている。最初からずっと一緒にやってきた感覚があって、ヤツがまだフロウの頃から関わっていたんだ。ジェイミーとヤツをインスタで見つけて、デッキを送ったりしてね。だからすごく個人的なつながりがある存在なんだよ。そもそも、最初はこのビデオに出る予定すらなかったんだ。でもいくつかヤツと撮ったクリップをポンタスに見せたら、その映像にすごく興奮してくれてね。それでネイサンも一気に勢いがついた。結果的に、かなり短い期間でパートを撮り切ったんだ。ネイサンを知っているからこそ、あのモチベーションの高さとか、チャンスをすごく大事にしている感じとか、撮影に対する純粋なワクワク感が伝わってきて、それを一緒に形にできたことが本当にうれしいし特別な経験だったと思う。
 あとはビーチでポールジャムを持ってる老人のシーンかな。あれは観るたびに笑ってしまう。たぶん85歳くらいの人で、何をやってるのか全然わかっていなかったと思う(笑)。オレらはただ「うん、ポールジャムだから大丈夫。こうやって持ってればいいよ」って感じで説明して。今思い出しても、あれは本当に笑えるシーンだよ。

 


Photos_Rafal Wojnowski

Sirus F Gahan @sirusf

ロンドンを拠点に活動し、独創的な表現でブランドの映像美学をさらに押し広げるフォトグラファー/フィルムメイカー。

Jamie Platt @jamie_platt_

イギリス・ボーンマス出身。長身を活かしたダイナミックなスケーティングとセンスあふれるトリックセレクションで注目を集めるPolarのプロ。

  • MBM Parkbuilders
  • VANTAN