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 どういう訳かスケートボードだった。理由なんて特にないかもしれないが、…
──第4回:宿命

2013.05.07

 どういう訳かスケートボードだった。理由なんて特にないかもしれないが、スケートボード以上に夢中になれるものは他には見当たらなかった。
 10年以上もスケートボードをしている人は大体こんな感じだと思います。理屈はわかりませんが好き過ぎるんです。スケートボードは僕を海外に連れて行ってくれた。スケーター同士なら言葉の壁なんて低い低い。スケートさえしていればいとも簡単に乗り越えられる。海外に行くことで日本を再認識できた。スポーツというよりアートに近い。ルールなんかないのでなにやってもありのスーパー自由、etc…。
 とまあ、自分の体験を交え「スケートボードがどれだけ素晴らしいのか」ということを、ほとんどスケートを知らない友達何人かに対して熱く語っていた時のことです。酒が入っていたこともあり、意外にもみんなが僕の話をフンフンと興味ありげに聞いているものだから、少し調子にも乗っていたのかもしれません。話は更に深くなり、ストリートで撮影したり、スポットを探したり、時にはフェンスを乗り越えてそこに侵入したり、警備員に怒られたり…という、スケーターならしょっちゅう体験していることの話になっていくにつれて、みんなの反応が少し変わってきました。

 「許可とってやったりしないの?」
 「それって不法侵入じゃない?」
 「人ごみでおばあちゃんとかにあたったらどうするの?」
 「警察に名前とか書いちゃって次捕まったらヤバくない?」

 それまで少し尊敬の眼差しで見られていたような気もしていたのですが、この辺からどうやら「ちょっとこの人危ないかもしれない」的な方向になってきているのがわかりました。SKATE AND DESTROYという言葉があるように、スケートで縁石をグラインドすれば大理石だろうとなんだろうと、黒ずみ、削れ、割れる…というふうに破壊を早めます。それを知っているビルの警備員なんかは、いきなり全力で追いかけてきたりもします。一緒に飲んでいた友達は冗談半分に僕を責めはじめました。

 「まじかよ?」
 「30歳こえてるよね?」
 「破壊?」

 許可をとることはないので、無断で侵入します。しかし人ごみで老人などいればそりゃ細心の注意を払い、もちろん無茶なことはしない。警察に自分の名前をメモられたことなんて何度もあるが、今のところヤバいことにはなっていない。僕はなんとかそれまでの僕に対しての興味を取り戻すべく、なにかいい理由をつけて正当化しようと思ったが、閃きはおりて来ません。

 「ビルの警備体制を強化すべく、彼らに試練を与えているんだ…」。
 「大理石の縁石の角は鋭すぎるから、僕らが滑るとちょうどいい具合に仕上がるよ!」

 僕は一瞬そんな相手にもされないだろう理由を考えていましたが、いきなりあることを思い出しました。何年も前にフォトグラファーのM氏とふたりで車に乗っている時のことです。話はどんなワケか「不思議な体験」という内容に転がって行き、なんでも彼は「少しだけ霊感がある」というのです。お化けや人魂を見るということではなく「なにか嫌なヴァイブスを感じやすい」と、しかもそれを感じるのはスケートスポットが一番多いらしいのです。僕らは普段人が立ち入らないビルの裏や、廃墟、無人の倉庫を見ると好んでズケズケ入っていって、何かあろうものなら即滑り倒す…というようなことを日常的にやっています。そういう場所にはやはり「溜まりやすい」そうなのです。それは何かと言うと、別に悪霊とかそこまで大袈裟なものではなく「負のヴァイブス」というものらしいのです。スケートボードには怪我がつきものですが、それもやはり「負のヴァイブスによく触れているからだ」と言われると、無茶苦茶な気もしますが妙に辻褄が合うような気もしてきます。がしかし、多くのスケーターはそんなものは一切感じず、ただただそのスポットでやりたいことをトライするのみ。そしてメイクした瞬間には本人、周りで見ている仲間、映像や写真を撮っているカメラマン、そこに居合わせたすべての人間から、喜びという高い波動(ヴァイブス)が発せられるのです。

 「負のヴァイブスを吹き飛ばす! スケーターにはそういう役割があると思うんだよ」。

 普通に言うM氏にとても共感すると同時に、彼の考え方の次元の高さに驚きしばらく興奮していたのを覚えています。

 ふと我に返り、僕を大人になれない哀れなスケーターとして見ている友達に向かって「僕らは下手な霊媒師よりいい仕事してるぞ!!」と言うと「危ないヤツ」に加え「狂っている」くらいのレッテルも頂いてしまいそうなのでそっと心の中にしまっておき、なんとか危ないヤツに留まることができたのです。セーフセーフ。

Daisuke Miyajima
@jimabien

M×M×Mの敏腕スタッフにして自称映像作家のジマこと宮島大介。伝家の宝刀Fs 180フリップをなくした今、どこへ向かっていけばいいのか迷走中。本能の閃きをたよりに書き綴る出口なしコラム。

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