
トリックの名前は知っているはずなのに、滅多に見ないトリックがダークスライド。オーリーをする際に必要なグリップをあえて削ぎ落としてしまうこのトリック、僕は実にパンキッシュだと思います。マーク・ゴンザレスがケイブマンからのダークスライドをレールでメイクしたのと、ロドニー・ミューレンが普通に走っている状態からさまざまなバリエーションでメイクしたのがその始まりというのが一般的な認識ではないでしょうか。
このトリック、板を半回転させて対象物にイン、半回転させてアウトするのでフリップイン・フリップアウトの要素はありますが、今時のニュージェネレーションたちがさらっとやってのけるそれらほど難易度は高くないはず(残念ながら僕はフリップイン・フリップアウトのトリックなんて持ち合わせておりませんが...)。例えば通常スライド/グラインドトリックをやるときには、滑りが悪いとワックスを塗るなり角を削るなりしてカーブを育てるのですが、ダークスライドはその逆で、板を育てます。板を育てるというか、何度かトライするうちに板のエッジの部分からグリップが剥がれてくるので、そうなりゃ後はこっちのもん。先ほどまでのグリップはいったいどこへ…下手すりゃ滑りすぎてまくられてしまうほどになります。あとはアウト時にテキトーにフリップさせたら偶然を狙って乗るだけです。おっと、僕の参考にならないトリックTIPになってしまった。ご静聴ありがとうございます。
2014年にウェス・クレマーのSOTY獲得を確固たるものにした“Crusty By Nature”パートでのハンドレールでのダークスライドや、あまり有名ではないですが去年発表されたジョシュ・ジョーンズによるダークスライドの進化系トリックがオンパレードのビデオパートがここ最近では印象的です。「これからダークスライドの時代の幕開けか?」なんて思ったりしましたが、やはり今も珍しい部類に入るこのトリックはまだ夜明け前の暗闇(ダーク)といったところでしょうか。
このトリックの何が面白いかって? グラインドを重ねていくごとに味わいの深まるトラックを見てニヤニヤしてしまうように、ツルツルになっていくグリップテープを見てニヤニヤできることです。だから偶然の一発を狙ってグリップを削ぎ落としていくのです(笑)。
―Kazuaki Tamaki(きな粉棒選手)