実にさまざまなパーツから成り立つスケートボードですが、そのパーツのひとつひとつにもその乗り手の個性が如実に現れるので、人の板のセットアップを観察するのが僕はかなり好きです。そしてこのセットアップの話だけで、翌日の夕方くらいまでアルコールが抜けないくらいのビールを楽しく飲み続けることもできます。当然自分にもセットアップに対するこだわりがあるわけですが、自分と他人のセットアップを比べて、どっちが乗り物としてより良い機能性を発揮できるのか? といった優劣に基づいた比較をその目的としているのではなく(もちろん機能性それ自体は大事な要素です)、そのセットアップから見えてくるその人の好みやこだわり、つまるところ個性そのもの、つまり「違い」を見つけ、それを楽しむことが好きなのです。ことスケートに限ったことではなく、究極的にはこの「異なる」というゆるぎない事実に価値を見出せる感性こそすべてだと個人的には思うのです。
早くも話が脱線しそうなので、スケートの話に戻りますが、そんなスケートボードを構成するひとつひとつのパーツが持つ特徴の中において、それを選んだスケーターの個性がもっとも顕著に現れるのがトラックのチョイスなのではないかと思っています。スケート創成期から今現在に至るまで、実に多くのトラックカンパニーがつねに切磋琢磨しあい、世界中のスケーターたちのこだわりに応えようと日々奮闘しているわけですが、そんな激動の中においてつねにその中心で抜群の安定感と信頼を勝ち得ているトラックカンパニーがあります。そうです、みなさんご存知のIndependent Truck Companyの存在こそ、スケートボードを語る上において最も重要な要素と言っても過言ではないと思うのです。
いまさらここで僕がその歴史や性能云々を語るのは野暮の極みなので割愛しますが、このトラックカンパニーを生涯のパートナーに選ぶスケーターが多いこと、そしてそのスケーターたちの個性がすべての証明です。僕はこのトラックを使っていないのですが、その理由として自分に合う合わないという感覚的なこと以前に、いまだこのトラックを使うということに、畏れ多いという感覚を持っている自分がいるのです。
そんなIndependent Truck Companyの存在、それはもう僕にとって、現場でのみ起こり続ける現在進行形の事件なのです。
--TH (Fat Bros)