スケートボードの映像、特に個人のビデオパートには必ずと言っていいほどBGMがあります。たまに、あえてBGMがなく現場の音のみのパートだったり、スポットでトリックと格闘しメイクまでの過程を捉えたB-SidesやRaw Fileなどといった映像もありますが、それはそれで無骨でかっこいいものだと思います。ただ自分はというと、やはりBGMがあってほしいなぁと思う人間です。仲間内や時にスケート界のレジェンドたちが作った音楽がBGMとして使われたり「コンセプトがこうだからこの曲なんだ」というのを垣間見ることができたりするのも面白いものです。使われているBGMが良くてディグってみてたところから、自分に新しい世界が拓けてきたりもしますしね。
そんなBGMですが、いくつかスケートビデオを観ているとあることに気がつくでしょう。スケートはしないがスケートビデオが好きでよく観たりする、という方も気がついているかもしれません。それは「BGMとスケートの音が当てはまっている」ということです。映像と曲の雰囲気が合っているのももちろんありますが、BGMの放つリズムと、スケートボードにより生み出される音、スケートを嫌う人たちからすれば騒音でしかないあの音が見事にマッチしたりするのです。時に音だけでなく身体の動きまで合わせてくるテクいのまであったりします。もちろん映像の編集により上手いことそうなっているわけですが、これを初めて自覚してしまった時から今に至るまで、映像とBGMがマッチした作品を観ると妙な快感を覚えるワケです。
ここで、自分が最も驚いた、BGMとマッチしたパートについて紹介したいと思います。Death Skateboardsのビデオ『Ordinary Madness』のリッチー・ジャクソンとパトリック・メルチャーという、ヒゲの渋いおじさんふたりによるダブルパートです。BGMには、Bob Marleyの有名曲をこれまた渋い男ふたりが唄うカバー曲が使われています。と言うことはそうです、片方のボーカルが唄う部分にリッチー・ジャクソンが、もう片方にパトリック・メルチャーの映像が当てはめられています。両ボーカルでコーラスする部分は、もちろんふたり同時にスケートです。このタイミング感がすごく絶妙なのです。はじめ自分はそれに気づきませんでしたが、何度かそのパートを観て初めてそれに気がついた時は鳥肌が立ったものです。
DVDやウェブ配信での映像が主流の現在、テープが擦り切れるほど…なんてことはないにしても、よく観ていた作品なんかを久しぶりに引っ張り出してみるときっと面白い発見がありますよ。ネットを開けばたくさんの映像が出てきては消えの繰り返しですが、自分の中でそれも飽和状態になってきた時に、かつてお気に入りだった作品を観てみると「コレ実はこういうことだったのか、面白い!」というひとつの要素がBGMだったりするのです。
--Kazuaki Tamaki