先週の昼下がり。インスタグラムから僕の目に飛び込んできたのは、工事で取り壊されたエルトロの20段ステア。ロープが張られ立ち入り禁止となっているようです。エルトロといえばThrasherの表紙も飾ったジェイミー・フォイのFs Kグラインドが近年のビッグメイクでしょうか。両サイドに付いたハンドレール、以前は真ん中にもレールがありました。アメリカじゃ学校の中にあるスポットもよく映像に出てきますが、高校の敷地内にあるこの物件もその歴史に幕を閉じることになりました。しかし普通に階段として使う学生や職員が多いはずなので、これがないと普通に困るのでは? ということで「10段+10段のダブルセットに生まれ変わる」という憶測もネット上で飛び交っているようです。
スケーター以外にもBMXやインライン、キックボードの連中なんかも飛び、ハンドレールを擦ってきたエルトロの20段。日本人による攻略を僕は知りませんが、「ここで1発カマしたる!」と意気込んでいたヤングガンもいたことでしょう。僕がスケートを始めたての頃にゲットしたビデオにそこを初めて飛んだドン・ニューエンのオーリーが収録されていたんだったかな。その後にアート・サーリのFsボードスライドなんか観て「あ、ここは...」と少しずつこのスポットについて認識していくのですが、エルトロに初めてトリックをお見舞いしたのはBirdhouse『The End』でのヒース・カーチャートのFsリップスライド。もちろんそんなことはだいぶ後になってから学習したことですが、当時リアルタイムで観ていた世界のスケーターが震えていただろうことは想像に難くありません。以降、ハンドレールでは基本形トリックはひと通り、ステアでも180やキックフリップが記録されています。異端系だとデッキ2台使いのヒッピージャンプ(鬼スラム)やファイヤークラッカーが印象に残るところ。どちらにせよ20段…普通の人はモニターの前に正座して指をくわえて観ることしかできませんね。
実は僕が地元でホームにしていた公園にも、おそらく同じぐらいのサイズだと思われるステア(19.5段…惜しい!!)があります。スケートした帰り道にいつもそこを通っては仲間と「これいつか飛べると思う?」、「いや無理っしょ」と話しながら上や下からステアの具合を伺っていたのが懐かしい。そんな仲間のひとりが数年前そこを挑んだものの空中分解、地面に激しく叩きつけられ負傷という結果に。並々ならぬスキル、根性、強靭な身体とメンタルが必要とされる超ビッグスポット、今はただ次の挑戦者を待つばかり。
さて、20段ステアの代表格であるエルトロはいったんスケート不可になりましたが、数々のメイクでレコードを塗り替えてきた猛者たちに改めてリスペクトを送りたい限り。「いつまでもあると思うな親とスケートスポット」。この言葉がまた染みる、名スポットの閉鎖となりました。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)