ストリート、その言葉からもじって出来た日本的スケートスラング(?)、「ヒトリート」。読んで字のごとく、ひとりでストリートを滑ることを意味するのだが、ふと思うといつだろう、最近ヒトリートに行ったのは。ひとりでパークに行くことはあるにせよ、ひとりでストリートで滑るのが減ってしまったことを憂いております。広場にある縁石やフラット、ステア…昔は何も考えることなく滑りに行っていたのですが、今はスケート欲がムラムラ溜まるまで動かないという有様。一体あの頃の活力はどこ行った?
加えて、ひとりでストリートを攻めることに対し、年々恥ずかしさを感じてしまうのだからタチが悪い。怪しげな固形物をそこらに塗りつけたかと思えば意味深に板を当てがって様子をうかがったり、はたまたズッコケたり。「あの人、ひとりで何やっているんだ?」 そう思われているような気がして邪魔をするんですな。まぁ実際は何とも思っていないだろうけど、それはそこらの広場でひとり楽器を弾いたり、大道芸の練習に打ち込む人の姿に近い感じかもしれません。しかし彼らは人通りの多い場所で披露することでメイクマネーできるかもしれませんが、スケートボードに関しては決してそうもいきません。時に怒られ、キックアウトされながら街をひとりで攻める姿は言うなれば「ストリート修行僧」。そんなことを考えている隙にも世の修行僧はヒトリートに出かけているのでしょう。面白いのが、「ヒトリートを自然にこなしている人ほどスケートも上手い」と思えること。仲間と楽しむスケートとは別に、ひとりで修行に励むのだからそれもそのはず。「この人、やってるねぇ〜!」 語らずともそう匂わせてくれるスケーターって、見ているだけでこっちまでヴァイブス高められますね。
ここでひとつ、思い出に残るヒトリートスケーターの話を。以前サンフランシスコに行ったときのことなのですが、有名スポットのステアで友達とカメラを回し始めてしばらく経った頃。フラッとひとりプッシュしてきたのはマーカス・マクブライド。足を止め僕らに「1発イイかね?」という挨拶もそこそこに50-50グラインドをサクッと仕留め、またどこかへ消えて行きました。なんてことないオーソドックスなトリックながらかっこよかったのは言うまでもありません。この夏、僕はまたそんなサンフランシスコに行くことにしました。友達に会ったりしつつ、しれっと出張ヒトリートに繰り出すのが目下の目論みです。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)