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スケーターのロマン
──プライベート物件

2020.10.30

 もしあなたが、個人や少数の有志により管理されたプールやボウルといったものにサクッとアクセスできる環境にあるというのなら、それは自慢できることに違いありません。その手の物件は希少で、山奥なんかにひっそりと存在し、そこに辿り着いた一部のスケーターにのみ門戸が開かれるといった感じ。一般的なパークにはないスケーター的創意工夫が施されていたり、そこに流れる独特の空気が特別な感じを助長します。緊張とも言えるそれは、仲間と探検に行ったガキの頃のような気持ちにさせてくれます。
 そもそもカリフォルニアなんかじゃ、プールで滑ると言えば他人の家に侵入し、その裏庭で勝手に滑るというハイリスクな任務も。一方でここ日本ではプール付きの家なんてありません。「無いなら作れ」のDIY精神のもと、必ずしも泳ぐためだけに作られたわけではなさそうなプールやボウルも、ここ10年の間で至るところに増えたように思います。各種メディアに登場するものからそうでないもの、またはSNSでは探せば見つけることができます。しかしプライベートという性質上、SNSやメディア露出を良しとしていなかったり、写真撮影すらダメなところもあります。それも踏まえると自分が知っているプライベート物件というのも氷山の一角に過ぎず、実際にはあちらこちらでアツいセッションが繰り広げられていることでしょう。
 プライベートの物件を所有するスケーターを何人か知っているのですが、不思議と必ずしもお金持ちという感じでもありません。誤解を招かぬよう申し上げると、絵に描いたようなセレブ、たとえば大豪邸に高級車をいくつも所有して…といった感じではないということ。郊外や山の中の比較的安い土地を共同で買うなり借りるなりし、そこに作りこむといったような話もよく聞きます。自分のプールを所有する…それこそ「これなら自分もきっといつかは」という夢と希望を持たせてくれるような話。
 大概の場合そのような場所では、招かれる側の立場で行くとタダもしくはわずかな修繕費程度の額で滑らせてもらうことができます。感謝の言葉を述べたり、差し入れを渡すといった行為ももちろんですが、それ以上に大切なのはそこでのスケートを大いに楽しむ(体育座りなんてもってのほか)ということ。それが物件のオーナーに対する感謝の意思表示であり、礼儀だと思うのです。

─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)

 



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