
今や珍しいものでもなくなったスケートボードの体験会やスクール、レッスン。現在日本のシーンを牽引する若きスケーターも、最初は親に連れられて参加していたという話も多く聞かれます。コロナ禍やオリンピックでスケートボードが注目され爆発的にスケート人口が増えたタイミングで、自身のスキルは怪しげながら授業料を取って始めたての人に教える「なんちゃって講師」みたいな姿も見られることもありました。しかし最近はもう聞かなくなったなぁ。情報も多い世の中なのでごまかしも効かなくなったのでしょう。とはいえほとんどのスクールでは基礎力のあるスケーターが教えるわけで、右も左もわからないビギナーにとってのそれはありがたいもののはず。先生たちが蓄積してきたノウハウ、より良いやり方を、独学でやるよりもスムーズに教えてもらえるのだから上達も早いはず。仮に自分も今なにか新しいこと、たとえばPCスキルとか学ぼうとなると、スクールに通ってみるところから始めると思うんす。
これまで自分もいくらかスクールで教えるという機会はありました。ここまで言っといてなんだが、ぶっちゃけ自分はことスケートボードに関してはスクールなんてどうでもいい、無くてもいいと思う派。というのは自分が始めたての頃、スケートスクールなんて存在が皆無だったからに他なりません。上手な人を観察し、動きを盗み、時にコツとか聞いてコミュニケーションを広げていきながら自分のモノにするってのが当たり前という時代の感覚が残っているため、わざわざスクールにして教えるっていうことに違和感があるのです。それではなぜ自分がスクールで教えたりしてたかというと、それに関わっている、日々お世話になるショップや人への少しばかりの恩返しのつもり。いざ教える場ではドタバタしながらも、新しい動きやトリックを覚えるビギナーの様子を見て楽しんでたりもするわけですが。
小学生の頃に読んだ漫画で、今も記憶に残るこんなシーンがありました。将棋を始めたての子どもがやがて青年になり、その師匠を越えてしまう。「ついに抜かれたか」とたじろぐ師匠に「師匠を越えることが恩返しだと教わってきましたから!」と答える青年。師匠はそれに返す言葉も出てこないっていうオチ。自分が誰かの師匠だと宣うつもりはございませんが、なんだか今になってわかるその立場、気持ち。その昔に自分がスクールでちょろっと教えた小学生に今では背丈もすっかり越され、スケボーも敵わなくなり…。すっかりスケートにのめり込み、親からも離れて仲間たちと自発的に動いていたり。スケーターとして一人前に成長していく姿を見れるのが何よりも嬉しく、それは教える側の受ける恩恵だとも思います。たまに教えることがある程度の自分がそう思うくらいだから、常日頃スクールで先生してたり、それを生業とするスケーターこそ、よりそのように思うことも多いのでしょう。
困ったことに過度に生徒を囲い込み、もはや洗脳とも思えるようなレッスンが行われているところもあるみたい。「ここのパーク以外で滑るな、他のショップに行くな、よそのスケーターと関わるな」みたいな。スケートボードから何も学んでいないような大人が開催しているようにしか思えません。そんな場所こそさっさと淘汰されてほしいものです。こんなこと書いちゃったけど、オレがスケート界から見えなくなったら、この原稿が原因で消されたものだと察してくださいませ(笑)。
—Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)